ドレス ―曄―

19/21
前へ
/245ページ
次へ
「本土の友人から全員分の偽造個人情報を手に入れた。データをマイクロチップに入れたら後は体内に入れるだけでいい。 お前らが犯罪者の子どもだという事実は消え、別人として生きていける。だが、一人だけ実在する人物の情報で本土に入ってもらう必要がある」 セイはそう言った後、机の引き出しからタブレットを取り出し、操作し始めた。 「さっき俺が話した事を覚えてるか?本土にいる女の子の話だ」 セイがネットで知り合った、死にたがっている少女の事だとすぐに分かった。 「覚えてる…けど」 「お前は彼女になりすまして本土に入り込むんだ」 タブレットをこちらに向けたセイは、私の目を見てハッキリとそう言った。 タブレットの画面には少女の写真が映し出されている。 長くて黒い髪、鼻の頭にはそばかすがあって、眉のくっきりとした凛々しい女の子だった。私とは真逆にも見える。 「どうして私が…その子になるの?」 「彼女はもうすぐ自殺する。でも、死なれたら困るんだよ。彼女は国にとっても大事な情報を記憶してる。その記憶を失うわけにはいかないんだ」
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加