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「どういう意味?記憶を失うって……」
セイの話は私にはまったく理解できなかった。記憶は人間の脳にあるもので、死んだら失うのは当然だ。
つまり、その少女が自殺しないようにする…そういう意味なのかと思ったけれど、話を聞いているうちに更にいろいろな疑問が浮かんでくる。
「もしかして…私がここに呼ばれたのは、その女の子と同じくらいの歳だから?」
そう訊いたら、セイはふっと笑った。
「お前には彼女の情報の入ったマイクロチップを体内に取り入れてもらう。あちらの生体信号が失われた時点でお前のマイクロチップが起動するようにしておいた。
すでに少女には尾行がついてるから、死んだら遺体の回収もしてくれる。あっちの家族はまあ…気付かないだろうな。お前は何も心配する事は無い。普通に生活していてくれればいいんだ」
「生活って…そういう考え方っておかしいんじゃないかな!?その子を助けてあげればいいだけの話でしょ?なんで身代わりが必要なの?そもそもどうしてセイが国に関わるような情報を欲しがるの!?」
セイの淡々と話す感じに苛立ちを覚え、私は声を荒げてしまった。でも、セイは顔色一つ変えなかった。
きっと私がどんなに叫んでも、先生たちに声が届く事は無いのかもしれない。
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