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「その理由はお前の体内でマイクロチップが起動した瞬間に分かるさ。彼女が今何を考え、どんなことに怯えて死を望んだのか…嫌でも理解する。
ここでお前が首を縦に振れば、誘拐されたガキを連れ戻してやるよ。ついでに大尉とお前の彼氏もな。さあ…どうする?」
こういう日が来ると分かっていたら、もっと早く煌鵺と一緒に本土の事を勉強していたのに…そう思った。
真尋は助けたいけど、マイクロチップがどういうものなのかよく分からないし、体内に取り込む…そう言われると不安になる。
その上、私はこれから死ぬかもしれない少女の代わりにこの世界で生き、もしかしたら記憶を引き継ぐことになるかもしれない。
こんな責任の重い話を私一人に聞かせるなんて、セイは卑怯だとすら思った。
「どうしても…その女の子は助けられないの?」
「無理だな。すでに半分死んだようなもんだ。さっき皆の前で話したことが全く嘘だとは言わないが、彼女が死にたがっているのは間違いなく事実だ。彼女が死ねば…日本も死ぬ」
狭い世界で生きてきた私には、即座に返答する事などできなかった。
すると、セイは椅子から立ち上がり、ドアの方へと歩き始めた。
「返事が聞けるまでこの部屋から出さない。医者たちに今の話をされちゃあ困るんでね」
「えっ!嘘でしょ!?そんなの聞いてない!!」
叫んでドアノブに手を掛けようとしたけれど、その手は全くドアノブに届かず、ドアは私の目の前で静かに閉まった―――。
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