Q ―鏑木―

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「鏑木さん…事件ですよ。幼児虐待、殺人の罪で4歳の女の子の両親が逮捕されました」 マネージャーの土方はタブレットでネットニュースを開き、鏑木に見せた。 記事には4歳の女の子がアパートの5階から転落し、頭を強打して死亡したことが記されていた。 解剖の結果、身体中に痣があった事から、日常的に虐待を受けていたものと見られ、少女が転落した時も、部屋から父親の怒鳴り声が聞こえていた…と、付近の住人たちが証言していた。 「子どもを何だと思ってんだろうな……」 鏑木はため息を吐き、袋から出したばかりの硬いせんべいに噛みついた。 バリッと音を立ててせんべいは割れ、鏑木の口の中に吸い込まれて行く。 「先週の…タクシーで暴れた20代の男ですけど、来月島送りになるみたいです。それからぁ…中学生の男子に対するわいせつ行為で有罪判決を受けた女性ですけど……」 その瞬間、鏑木は大きくむせて咳込み始めた。 「え…鏑木さん、大丈夫ですか!?」 土方は慌ててテーブルの上のペットボトルの蓋を開け、鏑木に差し出しながら、もう片方の手で背中を撫でた。 水を飲むと少しずつ落ち着きを取り戻した鏑木は、涙目になりながら土方を見た。
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