Q ―鏑木―

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「近藤…千絵…の、事か?」 しわがれた声で鏑木が告げた名を聞いても土方にはピンとこなかったようだ。 「名前までは覚えてないですけど…たぶんその人じゃないですかね?え…と、そうそう!その人の子どもが行方不明らしいんですよ」 「はあ!?」 なぜそんな話になっているのか…と、鏑木は食い掛けのせんべいをティッシュの上に置いて呆然とした。 数日前に咲菜を連れて叔父の家を訪ねた。咲菜をしばらく預かる話をしたら、叔父は快諾したのだ。 それが行方不明とはどういうことか。 咲菜の将来を考えて養子縁組の話まで持ちだしたら、咲菜の叔父に金を要求されて、かなりの額を置いてきた。 もしも鏑木の家で咲菜が見つかったとなれば、鏑木は誘拐犯にされてしまう。 「失踪届が出てるのか?」 そう訊いたら、「それは出てないみたいですよ」と、土方は呑気にせんべいの袋を開けながら言った。 「叔父ももともと子どもが好きじゃないらしくて、放っておいたら居なくなったっていう話で。叔父の方は気が済んだら帰ってくるだろうって思ってるみたいです。でもまあ事情を知った警察が行方を捜してるらしいんですけど…なんか変なんですよねぇ」 バリバリとせんべいを頬張りながら、土方は天井を見上げた。
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