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「だってさ、小学生なら親と一緒に住んでるのが普通でしょ?それなのに大人はほとんど出入りしてないし、どう考えてもおかしいわよ」
「じゃあ寮だったりしてなぁ。金持ち校なんじゃねーか?…それよりお前、保育士試験に集中しろよ。記者やめて保育士になるって決めたんだろ?」
そう訊くと、弓枝は顔をしかめて項垂れる。
「壁に直面したとき…人は目を逸らしたくなる生き物です」
つまり挫折寸前らしい。
弓枝が上司に資格取得後、転職を考えている…と相談したとき、出版社も人手不足なため、万一資格取得の過程で挫折したり、考えが変わった場合は戻ってきて欲しいという期待を込めて、弓枝を休職扱いにしてくれている。
弓枝にとってもそう言ってもらえるのは有りがたいことだが、弓枝は逃げ道があると死ぬ気で勉強する気にならないようだ。
「戻らないって断言できればいいのにぃ━!意思の弱さぁ……」
本人もやはり自覚している。
弓枝は突然一人で反省会を始め出した。
それでも携帯画面をチラチラと見てしまうのは、本能なのだろうか。
だとすると、やはり記者は天職のような気もする。
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