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そんな世界があるなんて思ってもみなかった。
俺も曄も…まだ幼い子どもたちだってエキネル島では長時間働かされていた。
本土ではそんな暮らしができるのだろうか。
「俺たちは犯罪者なんだ。清く正しい道を歩いてきた人々と同じ生き方なんてできるはずねーだろ。犯罪者は汗水たらして働くんだよ。そして、誰よりも多くの税金を納めなきゃいけない」
男はまた歪な笑みを浮かべて俺を見た。
そして大尉を見て…
「なあ、大尉?」
そう訊かれて大尉の口元がキュッと締まった。
「まあ…あんたをいじめたところで問題は解決しねーよな。さあ…どうする?」
室内に再び沈黙が訪れる。
男は先生と大尉の顔を交互に見ながら不敵な笑みを浮かべ、閉じたばかりのノートパソコンを開いた。
その動作に気付いた先生と大尉が男の手元を見ている。
「あんた達が全員死んだことになってるなら、マイクロチップを身体から取り出せばいい。その時点でマイクロチップは死ぬからな。でも、取り外したとバレれば最後に信号を発信したこの島に捜索が入る」男が言うと、
「じゃあ…島じゃなくて海に出てから取るのはどうだ?溺れ死んだと見せかけられるだろ」と、大尉が言った。
「それでもいいかもな。しかし、万が一のことを考えた時、体内に別のマイクロチップを入れておかないと危険だ。今や全国民にマイクロチップの装着は義務付けられているからな」
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