ドレス ―曄―

3/21
前へ
/245ページ
次へ
涼しそうな生地のワンピース。しかも、布は新しいものに見える。紗々がシャワーの前に着ていた服とは全く違う服だった。 「ほら、何してんだい。さっさとしな」 ソミアに頭を小突かれて、私は慌てて濡れた身体をバスタオルで拭いた。 エレベータを使って部屋に戻ると、開かれたクローゼットのドアの向こうに大量の服が掛かっていた。 ワンピースやスカート、ジーンズ…フリルのついた服なんかもある。 今まで暮らしてきた島では見掛けることのなかったデザインを前にして、私の胸は必要以上にドキドキしていた。 「好きなのを選びな。金はあんたたちの先生が払うらしい」 「え?先生が服を…?どうして?」 「そんな事は先生に直接聞きなよ。でもねぇ…服を選ぶなら利口な選び方をしなよ。ここは犯罪者が集まる島なんだ」 ソミアはまるで脅すような口調でそう言った。 でも、確かにソミアの言う通りだ。以前暮らしていた島でもそうだった。いつ看守に暴力を振るわれるか分からないから、身を守る意味でできるだけ生地の頑丈なものを選ぶようにしていた。スカートを避け、ズボンを穿いていたのもそれが原因だ。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加