ドレス ―曄―

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「はあ?お前と俺たちじゃ立場が違うだろ。お前は社会から不合格のレッテルを貼られたんだ。本土に戻れるはずがない」 「まあな。でもお前たちがこの依頼を拒むなら、お前らも本土には戻れない。なんなら今すぐにでも通報してやってもいいぞ。ここにガキと大人二人が入り込んだ…ってな」 セイは大尉から目を逸らすことなくそう話した。その様子から見ても彼は本気のようだ。 「でも…どうしてですか?あなた富豪なんですよね?広大な敷地を持ってて生活に困る事も無い。本土にいるより、こっちの方が生活しやすいんじゃないですか?」 誰かに追われる心配を考えればこの島にいた方が安全だと思った私は、セイにそう訊いていた。 セイは微笑み、その後ため息を吐いた。 「この島にいると暇なんだよ。ここでの俺の役割は、本土にいる人間と通信する事。誰だって心の支えが欲しくて誰かと繋がりたがってる。本土にいる家族と連絡を取りたいという夢を叶えてやれば、生きる力になるんだ。 だから毎日ネットサーフィンして、いろんな人の日常を覗くのが俺の日課だった。ある時、ひとりの女の子のブログに行きついた。 彼女は本土に住んでいて、実家は金持ちで何でも手に入る環境にいるのにいつも死にたがってた。だから彼女に近付いたんだ。個人情報を手にれるために」
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