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優しい声色でセイはとんでもないことを語りだした。
一人の少女を騙すために近付いた…そう告白したのだ。
「いろんな話をしたさ。年齢や家族構成、住所や彼氏の名前。それに、毎日何をして過ごすのか、学校に何人友達がいて、今何が流行ってるのか…いろいろ聞いた。
彼女は何でも話してくれたよ。自分は特別だから…私とまともに会話できる人間なんていない…そう言ってた」
「どういう意味?」
煌鵺が訊くと、セイはまた穏やかに笑った。
「本土に行けば嫌でもわかるさ。ある意味お前たちは恵まれてる。何も知らずに過ごせることがどれほど幸せか。彼女は自分自身を見失って、死を願ったんだ」
「つまり…お前はその子を助けたいのか?」
先生も身を乗り出して真剣に話を聞きだした。
「どうかな。助ける術があるのかも分からない。とりあえず会って話がしたい。今、本土で何が起きていて、それは果たしていい事なのか…確かめたいんだ」
その言葉には嘘はないように思えた。
セイは言いよどむことも無くはっきりとした口調でそう説明したし、嘘を吐くような素振りも無かった。
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