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「お前がどんなに真剣に頼んでもこればっかりは難しい。少し時間をくれ」
「そんな事言ってていいのか?軍にいつバレるか分かんないんだぞ?それに、この島はそんな悠長な事を言ってられるほど平和な場所じゃない。それくらい分かってるだろ」
大尉の言葉にセイが言葉をかぶせると、室内は突然シン…と静まり返った。
窓の外から子どもたちの声が聞こえる。
はしゃぐような楽しげな声……。
この部屋とは違って楽しそうだな…と、思っていたら、「真尋っ!」と叫ぶ紗々の声が聞こえた。
私も煌鵺も反射的にソファから立ち上がって窓の外を覗いた。
「真尋!真尋!!」
紗々と輝炎とソミアが、通りの向こうへと全速力で走っていくのが見えた。
生吹と同い年の男の子、徹もその後を追い、同じく幸仁も徹とは真逆の方向へ走り出す。
どうやら幸仁はこの建物に向かって走っているようだった。
「どうした?」
大尉と先生も声に反応して立ち上がり、私たちの後ろから窓の外を覗き込んだ。
もう、紗々たちの姿は壊れかけの平屋の向こうに消えてしまった。
「真尋に何かあったみたいです。今、幸仁がこっちに……」
それでも階段を駆け上がるには少し時間が掛ったようで、その間も私たちは窓の外の様子を窺う事しかできなかった。
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