ドレス ―曄―

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「え…それって……?」 つまり、あの境界線から向こうに出ると、何をやっても罪に問われない…そういう事なのだろうか。 「この島に来る奴らは犯罪者ばかりだ。中には(タチ)の悪い奴らもたくさんいる。だからこそ身を守るためには安全な場所が必要なんだよ。 まさか…この島に入り込んだ瞬間に忘れたか?誰にも襲われずにここまでたどり着けたことで安心したのか?ここは悪者が集まる島なんだぞ?」 そうだ…確かに先生は言っていた。 この島は犯罪者が集まる場所で、ジャッジメントショーで島流しを命じられた人たちもここに来ると教えてくれた。 安全なはずない。 人殺しもいれば万引き犯も強盗犯も、暴力を振るう人や詐欺師なんかも存在する。 「安全は簡単には手に入らないんだよ。それでも人は弱いから自己防衛本能が働く。俺はただ自分の能力を利用して、自分のためにこの安全地帯を作っただけだ。 だから…別に…俺の能力なら貸してやる。その代わり、この島ではルールを守れ。自分の身は自分で守れ。誰も信用するな。何があってもまず自分の事を優先しろ。それから…いなくなった子供の事は忘れるんだな」 他人の子だからそんなにはっきり言うのだろうか。セイは顔色一つ変えなかった。 「…忘れられるわけないだろ。大勢の子どもたちをあの島で失ったんだ!これ以上失うわけにはいかねーんだよ!」 先生は怒り、こぶしでテーブルを殴った後、「いてぇ…」と呟いた。
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