ドレス ―曄―

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「働き手か。それなら納得もできるが…なんで5歳の女の子をさらう?足手まといにしかならないじゃないか」 先生も私と同じことを考えたようだ。 「長い目で見れば貴重な存在だ。女は子どもも産める。それに、今だって奴らはあの子を使ってあんたたちをおびき寄せてるじゃないか」 私も先生もハッとした。 今、大尉と煌鵺が真尋を追いかけている。 境界線を越えれば無法地帯。だとすれば、大尉も煌鵺も奴らに捕まる可能性が高い。 私たちの様子を見てか、セイはふっと笑った。 「だから言っただろう、諦めろって。追いかければ追いかけるほど犠牲者が増えるだけだ。それに、わざわざさらったんだから簡単に殺しはしないさ」 セイの言い分にも一理あるが、まだ自分の事もちゃんとできない子どもが誘拐されたのに無視などできるはずも無かった。 煌鵺と大尉の二人で真尋を連れ戻せるのだろうか。かといって、リスクが大きいと分かっていてそこに人員を投入するのも気が引けた。 「夜まで待とう。陽が落ちたら真尋を探しに行く。お前が言った通り、誘拐されてもひどく抵抗しなければ殺される可能性は低いだろう。しばらくはどこかに監禁する可能性が高い。だとしたら、陽が落ちて奴らが油断している時を狙おう」
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