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ボタンを押した途端、建物内に激しい警告音が鳴り出した。火災が起きた時とは違う種類の音だ。
驚いた俺と煌鵺は両手で耳を塞いだ。
しかし機械の向こうから戻ってきた大尉は至って冷静な態度。
「塀を解除すると必ずこの音が流れるんだよ。だからこの島に出入りするときは特殊な船が必要なんだ」
この島に人が近付かないのは知っている。
近付く者を撃ち落とすとも言われているし、本土の人間は避けて通る場所だ。
政府の人間がこの島に視察に来る時も、いつも決まった船でやって来る。考えてみればよくできたシステムだ。
「30分で復旧する。すぐに島を出るぞ」
大尉の力もあって、俺たちは走って子どもたちが待つ部屋へと向かった。
まずは曄たちが待つ部屋、その後101号室へ向かうと、二人の女の子がいた。
12歳の輝炎と17歳の紗々だ。
二人とも数年前に親に有罪判決が下り、ここに送られてきた。
島の中でも少し浮いた存在だ。
俺と大尉は2隻のクルーザーに子どもたちを乗せて島を出た。
きっともう、この島に戻ってくる事は無い……。
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