9回も転生した黒猫

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

9回も転生した黒猫

   これは僕の小さい頃に、ものすごく猫好きなおじいちゃんがよく話してくれた物語で、時空を乗り越えて新たな生命を天より与えられた、9回も転生した黒猫の一生だ。  9回も生命が断たれて、なぜ9回も生まれ変わることができるだろうかと小さい頃にはよく頭に浮かぶ質問で、どうしてどうしてと執念が深く、おじいちゃんに説明してもらうシーンが今だに忘れることができない。  しかし、今はどれほど叫びで、理由を求めようとしても、所詮は無意味なことにすぎない。なぜなら、直前の墓に映ってある、その死者の遺影こそ、最も有力な証なのだ。だから、せめて、一度僕の口からの、この黒猫の物語をその世で静かにお聞きください。 昔々、9回も転生した、真っ黒な猫がいた。 猫は全身が真っ黒だが、艶の擦り出されたような毛が生えている。 黒猫は9回も死んだけれども、言い換えれば、9回も生まれ変わった。 9人の飼い主はその猫が好きで好きで、甘やかしていた。一方で、9人の飼い主は猫が死んだときに、悲しんで悲しんで、「一生の涙」を尽くすように泣いていた。 初めては、盗人の飼う猫だった。盗人は常に猫を連れて暗い道で歩く。時には猫のように誰にも気づかないよう、密かに足を動かす。盗人は犬の飼う人の家にしか訪ねず、そういうような家でしかものを盗まない。犬がワンワンと猫へ吠えているうちに、速やかに金庫を開けて、宝を盗る。だが、ついに或る日、猫が犬に噛まれて、死んだ。盗人は盗った宝と、死んだ猫を抱きしめて、暗い道で歩いて、悲しんで悲しんで、家に着いたら、泣きながら、猫を庭に埋めた。 1回目の転生では、赤ちゃんの飼う猫だった。両親は忙しくて忙しくて、赤ちゃんを寂しがらせないように猫を買った。家には散らばるおもちゃだらけだが、赤ちゃんは猫が一番好きで、毎日猫を弄んで、いじめていじめて、楽しんで楽しんで、時々、猫を片手でベットから落とす。或いは、歯医者ゲームで、猫の歯を抜いたりすることもした。ついに或る日、乗馬ゲームで、猫が赤ちゃんの重量に耐えられなくて、死んだ。赤ちゃんが悲しんで悲しんで、ワーワーと泣いていた。猫をその小さい手で、泣きながら、土に埋めた。 2回目の転生では、セーラーが飼う猫だった。海で航行のもとで、船が揺れて揺れて、たまに波に撃たれたりすることさえあったが、猫は楽しがっていた。様々な港に止まり、取り取りな海域へ、セーラーとともに挑んていて、自由だ。が、或る日に、強い波のせいで猫が船に落ちて溺れてしまった。セーラーがそれに気づいて網で猫を救ったが、息がなくなった。セーラーが悲しんで悲しんで、猫を木箱に入れて、泣きながら、海に流した。 3回目の転生では、田舎の主婦が飼う猫だった。田舎には、ものすごくねずみがいて、主婦は常にねずみを捕まえろと猫を催促する。しかし、ねずみは素早い行動をして、ほとんどの時は穴に身を隠す。猫が悩んで悩んで、どうも捕まえられない。主婦は極端に、猫に罰を与える。一日中、一匹も捕まえなかったら、飯は抜きだと言う。実際にもそう実行したのだ。ついに、骨の形さえ見えるほど、猫が飢えて、或る日、死んだ。他の猫を買うのはさらにお金が取られるため、主婦は悲しんで悲しんで、泣きながら、田んぼの隣に猫を埋めた。   4回目の転生では、サーカスの芸人が飼う猫だった。芸人は常に猫を魔術箱に入れて、チェンソーで箱を断ち分ける。芸人は傷さえない猫を箱の中から取り出すたびに、お客様たちの拍手が絶えない。しかし、ついに或る日、芸人は失敗した。断ち分けられた猫を箱の中から取り出すと、誰の拍手も聞こえない。芸人は悲しんで悲しんで、泣きながら、猫をサーカスの小さい休憩室の後ろに埋めた。   5回目の転生では、王様が飼う猫だった。王様は侵略が大好きで、年ごとに、戦争を何十回も起こす。出陣のたびに、猫を連れていく。ものすごく激しい戦争だ。ついに或る日、敵襲の兵が放った矢は猫を刺さった。激しい戦争で、王様は猫を抱いて、悲しんで悲しんで、泣いていた。城に戻るときも泣いて泣いて、城に着いたら、猫を花壇に埋めた。 6回目の転生では、女の子が飼う猫だった。女の子は猫が好きで、小さい洋服を着させたり、猫に化粧してあげたりする。猫が嫌がって逃げると、すぐに捕まえて強制的に洋服を着させる。ついに或る日、女の子は猫に洋服を着させて、首のサイズが合わなかった。すると、猫が踠いて踠いて、女の子は猫が嫌がるのを何回も見ていたから、気にしていない。途端に、猫は悶えずにいて、死んだ。女の子が悲しんで悲しんで、人形とともに、庭の樹木の根に埋めた。   7回目の転生では、魔女が飼う猫だった。魔女は魔法の箒を持っている。夜になると、魔女は猫を連れて、魔法の箒で回転したり、上昇したり、降下したりして、一番高い屋上で夜景を観る。帰りも回転したり、上昇したり、降下したりする。猫はいつも怖がっている。ついに或る日、猫は箒から落ちて、死んだ。魔女は最後、平らな猫を見つけた。悲しんで悲しんで、泣きながら、魔法で作成した六芒星の真ん中の土に猫を埋めた。     8回目の転生では、孤独に独居をするおばあちゃんが飼う猫だった。おばあちゃんは常に椅子に座って、猫を腿に置いて、一緒に太陽を浴びる。おばあちゃんは年をとっているせいで、毎日椅子に座って、居眠りしたり、遠くを眺めたりする。ついに猫が年をとってしまって、死んだ。おばあちゃんは悲しんで悲しんで、しわしわの手で何度も涙を拭いていた。庭に唯一の朽ちる樹木の下に猫を埋めた。 9回目の転生では、飼い主がいなくて、野良猫だった。猫は自由で、自分のことが何よりも大好きだ。艶の擦り出されたような黒毛で、魅力的だ。雌猫たちはみんな、猫のお嫁になりたがる。雌猫たちは大きい魚を贈ったり、上品なねずみを贈ったり、猫の立派な黒毛を舐めたりして、猫の好感を求めた。しかし、猫が一番好きなのはやはり自分のことだ。贈り手には、俺は何回も生まれ変わったんだ、誰でも俺に及ばないぞとひたすらそう言うだけだった。一方、たった一匹の真っ白の雌猫が猫のことに惹かれなかった。そして、猫は白猫に近寄って、俺は9回も生まれ変わったんだぞと自慢した。けれども、白猫はただ、そうなんだと冷酷に答えた。猫は少し苛立った。なぜなら、猫は自分のことが一番好きだから。 二日目、三日目、猫も白猫の家に訪ねて、お前は一回の人生も終えていないだろうなとさらに自慢した。けれども、白猫はただ、そうだねと冷酷に答えた。四日目、猫は白猫の家に訪ねて、ほら、見ろ、俺はカーサスの猫だったぞと言うや否や、空中に3回も回転していた。白猫はまた、そうなんだと冷酷に答えた。それを聞いて猫は、俺はどこの港にも訪ねたセーラーの猫だったぞと白猫の目をじっと見ていて、自慢した。今回もまた、そうなんだと冷酷に答えられた。猫は諦めずに、俺は王様の・・・を言うのを変えて、俺のそばにずっといてくれないと白猫に問うた。すると、白猫はいいよと答えた。 その後、猫はずっと白猫のそばにいる。白猫は子猫を産んで、猫も俺は・・・のような口を辞めた。子猫たちは立派に育てられて、猫は白猫と子猫たちが好きで、自分のことよりも大好きだ。漸く子猫たちは大人になって、猫と白猫のそばから離れていく。あいつらはもう立派になったものだなと猫が感慨をした。白猫はそうだねと優しく話を添えた。時間の流れに依って、白猫は段々と老いていって、猫は優しくなっていく。 猫は白猫と永遠にいたがる。けれども、或る日、白猫は静かに猫のそばにいて動きやしない。白猫は永眠してしまった。猫は悲しんで悲しんで、初めて泣いた。朝から晩まで泣いて泣いて、また晩から朝まで泣いて泣いて、泣き続ける。1日過ぎ、2日過ぎ、3日過ぎ・・・数えてみれば、すでに9日間にかけて泣きまくってしまっている。 時の軸は止まらず、日は延びていく。ついに、10日目の昼間で、猫の涙は止まった。静かに白猫のそばにいて、動きさえしなくなった。 今度は転生せず、誰も埋めてくれなかった。 猫はずっと白猫のそばにいる。  黒猫はきっと何かと出会うために、大事なものを見つけて、遺憾を残さないために、9回も転生したのではないかと今更気づくようになった。この物語はおじいちゃんが唯一に残してくれた、おじいちゃんとの繋がりだからかもしれない。しかし、おじいちゃんにも9回転生して欲しい。そうすると、いつか、僕と再び会う日が訪ね得るだろう。  と思うと、おじいちゃんの生前の言葉を思い出せた。  「俺はきっと猫のように転生しないよ」という一言を。  知らずのうちに、なぜか視線がぼんやりとなってしまった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!