0-1 地獄のドラフト会議

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 私、我野がそんなことを考えていると、テレビから自分の名前が聞こえた。 テレビを見ると、 横浜ArNAベイスターズ 第四巡選択希望選手  我野 宇奈  『やった... って、えっ、ドラ4⁉』  正直、育成にでも滑り込めたら御の字だと思ってた。 こんな高い順位で指名されたのを喜ぶべきなんだけど、予想外すぎて唖然とした。  指名リストを見直すと、ベイスターズはドラ3は男子選手だったが、ドラ2で大卒左腕として女性投手を指名していた。    球団社長らしき人がニコニコしている傍ら、セリン監督は真剣な目つきでスカウトと話をしている。  いったい、何を企んでいるんだろう... ただの客寄せパンダにするつもりではなさそうだけど。    その後も、ベイスターズは女子や高卒に偏重する独自路線を突っ走り、会場をざわつかせていた。    そして、広島メープルズがドラ3で女子選手を指名していたけど、あそこもここ数年低迷していて、あまり注目されなかった。    その日のネットニュースでは、ベイスターズのことを酷評する記事が載っていた。 「ドラ4まで投手指名を続ける新監督の愚策」 「女子選手5名!ベイスターズは強くなる気がないのか!」 「22才以上は15人中5名だけ、浮上はまだまだ先か」  『せっかく指名されたんだ、喜ばなくちゃ』  そう自分に言い聞かせながら、さっさと寝床についた。  その日は興奮と不安のせいで、しばらく眠れなかった。
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