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そうして迎えたキャンプ当日。不安は残念ながら的中した。
表情がひきつる歓迎団の方々。
ずっとふてくされている先輩陣。
そんな彼らに目も向けないセリン新監督。
空港に着いてすぐに、あたりはお通夜ムード。
本来は歓声に飲まれているところが、まばらに拍手が鳴るだけだ。
そんな中、歓迎の花束を受け取った監督は、チラッと私たちの方を見て、マイクの前に立った。
「初めまして、このたびチームの監督に就任しました、タイート・セリンです。」
英語の訛りが入っているのか、長年日本で暮らしてきたことにより、彼女の日本語はペラペラだ。
「現状、今のチームは他のチームに大きく劣っている...
いや、何もないという状態です。」
はっきりとそんなことをいっていいのかな... そう思いながら先輩方を見ると、明らかに機嫌が悪くなっている。
「私が掲げたチームスローガン:”Build”の通り、0からこのチームを作り直すつもりです。
ファンの皆さんには不甲斐ない姿を見せ続けるかもしれませんが、3年後までにはこのチームを優勝に導いて見せます。
どうか、よろしくお願いします。」
シーンと静まり返っている会場。
すごく、気まずい。特に視線が。
「ベイスターズが強くなるなら、なんでもいいぞー!!」
観衆にいるファンのおっさんが叫ぶ。
それに呼応されるように、ぽつぽつ拍手が鳴りわたる。
そんな形で、悪夢のようなスタートでキャンプは始まった。
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