0-2 バラバラの春キャンプ

2/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 そうして迎えたキャンプ当日。不安は残念ながら的中した。  表情がひきつる歓迎団の方々。  ずっとふてくされている先輩陣。  そんな彼らに目も向けないセリン新監督。  空港に着いてすぐに、あたりはお通夜ムード。 本来は歓声に飲まれているところが、まばらに拍手が鳴るだけだ。  そんな中、歓迎の花束を受け取った監督は、チラッと私たちの方を見て、マイクの前に立った。 「初めまして、このたびチームの監督に就任しました、タイート・セリンです。」  英語の訛りが入っているのか、長年日本で暮らしてきたことにより、彼女の日本語はペラペラだ。 「現状、今のチームは他のチームに大きく劣っている...  いや、何もないという状態です。」  はっきりとそんなことをいっていいのかな... そう思いながら先輩方を見ると、明らかに機嫌が悪くなっている。 「私が掲げたチームスローガン:”Build”の通り、0からこのチームを作り直すつもりです。  ファンの皆さんには不甲斐ない姿を見せ続けるかもしれませんが、3年後までにはこのチームを優勝に導いて見せます。  どうか、よろしくお願いします。」  シーンと静まり返っている会場。  すごく、気まずい。特に視線が。 「ベイスターズが強くなるなら、なんでもいいぞー!!」  観衆にいるファンのおっさんが叫ぶ。  それに呼応されるように、ぽつぽつ拍手が鳴りわたる。  そんな形で、悪夢のようなスタートでキャンプは始まった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!