0-2 バラバラの春キャンプ

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 そして、翌朝のキャンプ初日。 投手と野手に分けられ、さらにその中でも4人組のチームに分けられる。 私は女子だけで固められたチームに入れられた。  私と同じチームにいるのは、 「ファー...、おはようございます...」  どこかぼーっとしているイギリス人ルーキー、スタット投手。 「good morningだ。」  監督が独自ルートで見つけたアメリカ人助っ人、フォーウラー投手。    そして... 「...おはよう」  ドラ2の怪物左腕、緑宮投手。 威圧感が強くて、苦手なんだよ...この人。  移動中、一人何か考えながら歩く緑宮さん。 その後ろを私たちがついてゆく。 『緑宮さんって、なんかオーラがすごいですよね...』  二人も私と同じ意見みたいだ。 「たしかに、彼女はなんか怖いです。」 「同じteammateとして、仲良くしていきたいが、  あんな態度を取られてはな...」  監督が言うように、今のチームは完全にバラバラになっている。 他の練習チームを見ると、ポケットに腕を突っ込んでガムをくちゃくちゃさせながら歩いている始末だ。 到底プロだとは思えない。  だから、一人でも多く、一緒に戦う仲間を増やしたい。  一回深呼吸をして、彼女を追いかける。 『あの、緑宮さん』 「ん?」 鋭い眼光が、私に向けられる。 『えっ あっ  えー』 まずい、何を話せばいいか考えてなかった... 「? 何か言いたいことがあるんじゃないのか?」 何かないか... 話すきっかけが... 「我野」 そんな私に見かねてか、緑宮さんが話しかけてきた。 『え、は はい なんでしょうか』 「親切にしてくれるのはありがたいが、  正直その... ほっといてくれ」 『えっ、でも』 「別にお前らの事が嫌いな訳じゃない  ただ... いや、とにかく、頼む」  そう言って彼女はそっぽを向いて歩き出した。 その時の横顔はどこか寂しげだった。
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