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スタットさん、フォーウラーさんと一緒に練習場から出ようとしたところで、マスコミ陣がざわめいていた。
彼らは先に出た緑宮さんを取り囲んで質問を投げかけていた。
「すみません、監督の発言についてですが、率直な感想をください!」
監督? またなにか言っちゃったの?
「すみませんが、監督が何を話したのか、まだ聞いてないです」
彼女は淡々と答える。
「簡単に説明しますと、
彼女は、血の入れ替えを強行するみたいです」
「血の入れ替え...」
「彼女は、使えないベテランは実績や貢献を度外視してチームから追い出すとも話していた。」
『えぇ! そんなことしたら...』
確かに、うまくいけば私たちのような若手の出番を増やすことができ、世代交代が進み、チームを強くすることができるだろう。
しかし、選手から猛反発を受けるのは必須だ。 若手からしても、チームから追い出されるんじゃないかと不信になってしまうかもしれない。 下手すれば、チーム崩壊の危険がある。
「...彼女が言っていることは間違っていないと思います。」
緑宮さんは、迷うことなく答えた。
「確かに、彼らは一軍に出続けていました。
しかし、ただそれだけです。」
直球で先輩を批判する発言に、記者陣は釘付けになっている。
「私は、そんな彼らをまったく尊敬していません。
だって、五年連続で勝率1割切ってますからね。
恥ずかしいとは思わないんですかね、あの人たちは」
『緑宮さん、それは言い過ぎでは』
彼女は、私の方を一度見て、すぐに話を戻す。
「もし、監督と先輩方が対立したら、私は監督の方につきます。
それでは」
緑宮さんは、言いたいことをいうと、報道陣をかき分けて出て行ってしまう。
そうなると、当然
「みなさんは、いかがお考えでしょうか?」
私たちのほうに来るわけで...
さあ、どうしよう。
もちろん、入団早々に監督に歯向かうわけにはいかない。
だからといって、先輩を敵に回したくはない。
いい感じにごまかせないかな...
「私も彼女と同じく、監督のplanに同意します」
『え、フォーウラーさん?』
「私もですねー、このままじゃいけないと思います」
『スタットさんも⁉』
まさか、二人も同じことを考えていたの?
これじゃあ、逃げ道がない。
「我野さんのいかがですか?」
ああ、もう来ちゃったよ。
『私も、ベイスターズが強くなるなら... 仕方ないです...』
これで、私も先輩に喧嘩を売ったことになってしまった。
案の定、その日の夕刊には、
『ベイスターズ、内部分裂か⁉』
という見出しが貼られていた。
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