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理由が分かったとしても、そんなことすら出来ないのかと腹が立つ。しかしこの程度で怒号を上げるのも、お里が知れるような気がしてできなかった。大きく鼻から息を吸い、大きく口からため息を吐いて気分を落ち着ける。
光彦は座ったままこちらを眺める真部へ視線を落とす。そして、ふとひとつ思い出した。この感じ、真部のような人間をどこかで見たことがあると。頭に浮かんだのは、今年三歳になったばかりの従妹だ。
(「YES」か「NO」かを首だけで表現するあたり、一緒だな)
(いや? まだ「NO」が言えるだけ、三歳児の方が上か)
光彦はひとり落胆し
「……俺が見つけたから、もういいよ」
とだけ言うと、足早に図書館の出口へと向かった。真部も席を立つと、光彦の後を追う。
光彦と真部が演習室に戻る。時計の時刻は十一時十分。昼休みまで五十分を丁度切ったところだ。光彦のいるE班の作業台では、須藤と本郷がまだ議論を重ねていた。
「いま戻ったー」
と言いながら光彦が席に着く。しかし須藤と本郷は全くこちらに意を介さないようだ。光彦も、気にせずにパソコンの電源を付ける。デスクトップにはソフトウェアが一つだけぽつんと置かれていた。名前が英字で書かれているため、これが何なのかまで、光彦には分からない。
「とりあえず、本を見てみるか」
光彦は借りてきた本を開く。環境構築も丁寧に書いてある。載ってある写真と机に置いてある制御ボードを見比べる。同じものではないが、大まかには似ている。なら、この本をそのまま使えるかもしれない。全く別の物だったらどうしようかと考えていたところだ。
本によると、デスクトップにあるソフトは、制御プログラム作成用のものらしい。これと制御ボードを使って、機体を動かすようだ。ただ、光彦には機体を動かせる技術を持ち合わせていない。これから習得していかなければならない。
「さーて。何をすればいいんだ?」
光彦は本のページをめくった。
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