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須藤と本郷は機構について話し始めたし、放っておいていいだろう。問題は、真部だ。まだ一言も話していない真部は、光彦にとっては未知の存在だ。機構か制御かの話の最中も異論を出さなかったあたり、もしかすると電気制御の経験者かもしれない。
「……それじゃ、一緒に頑張っていこうか。マナベ、で合ってる?」
真部が小さく二度頷いた。
「真部はプログラミングとか経験ある?」
真部が小さく頷いた。ということは、経験があるのだろうか。
「なら、プログラミングは任せていい?」
と光彦が尋ねると、真部は首をかしげた。いかにも悩ましい、といった様子だ。
「俺も頑張るからさ」
と光彦が声をかけるも、やはりどこか不安そうだ。その一連の様子を鑑みて、光彦が
「……まさか、実はそんなに経験ない?」
と聞き直す。すると真部は少しの沈黙の後、小さく一度頷いた。
「あ、無いの?」
光彦が思わず尋ねると、真部は申し訳なさそうに俯いた。結局のところ、経験などないのだろう。光彦の目から見ても、真部が”デキるやつ”には到底映っていなかったので、まあそういうことなのだろう。さっきの「経験がある」という嘘は、真部なりの見栄なのかもしれない。まだ一言も発していないので真偽は分からないが。
よりにもよって、最もコミュニケーションが不安な相手と経験の無い作業に従事することになったわけだ。
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