0人が本棚に入れています
本棚に追加
「取りあえず、何か使える本でも探しに行こう」
何でもいいから取っ掛かりが欲しい。幸いにも構内には図書館が併設されているから、参考になる本があるかもしれない。光彦の提案に真部も首を大きく縦に振った。
須藤と本郷にも要件を告げて、演習室を後にする。機構を担当する二人は、暫く仕様について演習室で議論するそうだ。真部を連れて、校舎から外へ出る。春先のまだ冷たい風が通り過ぎた。
「やっぱり、まだ肌寒いなぁ。真部」
真部は無言でついて来る。返答はない。時間的に授業中のせいか、出歩いている学生が極端に少なく、構内は静まり返っていた。
数分歩くと、併設の図書館につく。学生証をドアにかざして、セキュリティを通る。「専門書の蔵書、十万冊」を謳っているだけあって、背の高い本棚が奥まで続いている。その最も手前で光彦を出迎えたのは、蔵書検索用のパソコンだった。幸いにも四台ほど空席なようなので、光彦がその一つに腰掛ける。真部は眉をひそめながら光彦の後ろに立つ。
「二人で手分けして探そう。その方が効率がいいし」
トントンと光彦が隣の席を指で叩いた。真部はこくりと頷くと、その席へ腰掛ける。
「調べ方は分かる?」
と念のため、真部へ聞いておく。すると真部は、またこくりと頷いた。入学してから無料のレクチャーも開催していたし、きっと大丈夫だろう。光彦自身もレクチャーを受けていたので、そう思って安心した。
光彦は専用のブラウザを立ち上げると、めぼしい単語を打ち込んで蔵書を検索してゆく。
最初のコメントを投稿しよう!