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怒りで目の前が暗くなる。駄目だ。嫉妬で見境付かなくなりそうだ。
あれは、魔王が勝手に先生に仕掛けた攻撃だ。先生が悪いわけじゃない。でも、それでも赦せない。
それからも彼は一方的に先生に何やら話をし、ハイツの階段を駆け下りて行った。車に乗り込んでエンジンをかけ、出発したのを見届けた後、俺も階段を駆け上った。
「先生」
まだ部屋にも戻っていない、放心状態の先生に声を掛けた。
「あ、あの・・・・どう、したの?」
魔王に続いて俺まで登場するとは思っていなかったのだろう。先生は非常に驚いた顔をしていた。
「どうしたのって・・・・そりゃないでしょう。勝手に黙って帰っておいて、連絡も取れないんだから。心配で、様子見に来たんだけど。見た所、顔色悪く無いし、大丈夫そうでよかったよ。安心した。それより、山下君が来てたよね、さっき。ニアミスで彼の方が早く階段上って行ったからさ。言い合いになったら先生に迷惑かけちゃうから、彼が帰るまで階段下の見えない所で待っていたんだ。彼の性格だと、先生に負担かけないようにすぐ帰ると思ったし」
読みは外れていなかったけれど、大誤算がひとつ。
「あ・・・・うん」
先生の小さな唇が微かに動いた。その唇に、あの男が触れたんだ――少し考えただけで、嫉妬でおかしくなりそうだ!
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