レッスン5

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 会社に戻ったら、作業場で通販部がてんてこ舞いだった。九時までの梱包が間に合わないのだろう。通販部に関係の無い他の社員も、手伝っていた。 「南さーん、助けてーぇ! 梱包が全然終わらないのー!!」  スッチーが私に泣きついてきた。「いたいっ、いたたたた・・・・っ」  ギュッと肩を掴まれたので、思わず呻いて顔をしかめた。 「南さん、どうしたの?」 「諏訪さん。実は南さんが、先ほど出荷が間に合わないと判断して、わざわざ車から降りて、一人で重い荷物を抱えて集荷所に向かって下さったのです。出荷はお陰で間に合いましたが、そのせいで腕と肩を痛められてしまいました。これ以上彼女に負担をかけるのは、よくありません。派遣の――しかも梱包担当でもない方に、ここまで我々社員が頼り切っているのは、どうかと思いますよ? 労災手当も出して、有給休暇も取って頂けるように致しましょう。そうすれば、いかに彼女が我々の為に頑張って下さっていた事が、わかりますから」 「それは困るわっ!」スッチーが悲愴な顔で訴えた。「神保君っ。解ったの! 南さんが今までどんなに頑張ってくれていたのか、よーく、よ――――くわかったのぉお――っ!」  スッチーが涙目で、更に王子に詰め寄った。 「だってあの三人、在庫がどこにあるのかさっぱりわかっていないし、ようやく持ってきた商品は全部間違っているし、ムチャクチャなんだもの! 今までどうしてたのっ、て怒ったら、全部南さんが用意してくれてたって白状したのよー!」  
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