巡るから、また灑涙雨。

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中学校の文化祭の出し物を決める学級会では、全員でニチアサのアニメ曲をパラパラで踊るなどという馬鹿げた案が女子から飛び出して、断固として反対の意思を表明した。そんなもの、踊りたい人間だけが集まって狂ったように踊っていればいいのだ。結局は多数決という数の暴力で俺の尊厳(そんげん)蹂躙(じゅうりん)され、パラパラ軍に徴兵(ちょうへい)されることになった。  なるべく面倒なことからは遠ざかり、みんなですべきことはみんなにやらせておいて、「何もしないをする」という固い決意を抱いて大人になり、そしてニートになった。  親父は「何もしないをするのをやめろ」と、わけの分からない説教を垂れ、ある日、「明日からヨーロッパに行ってくる。遊びじゃないぞ。欧州の宗教を視察に」とかなんとか言って遊びに出掛けた。(たい)()遺伝子は親父から受け継がれたものだったのだ。  前置きが長くなったが、そういうわけで俺はニートから神主へとジョブチェンジすることと(あい)()った。大出世だ。面倒で、大迷惑なことに。  いつの間にか作られていた神主業務の引き継ぎノートが俺の相棒だ。他に分からないことがあれば、近所のジジババや、よその神社の神主達が教えてくれるので、なんとか業務をこなすことはできている。こんな付け焼き刃の神主が神社を(まも)っている、という事実も現代日本の抱える問題ではなかろうか。いや、そんなことはなかった。俺と親父が特殊なだけだった。()(せい)しよう。
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