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うだる暑さに目を覚まし、カーテンの隙間よりもれる月明かりを頼りに壁にかけられた時計に目をやれば、針は午前3時を過ぎた辺り。
アキラがTシャツの袖で滲む汗を乱暴に拭っていると、チリンッチリンッと窓辺にぶら下げた風鈴が涼しげな音を奏でる。
チリンッ
チリンッ
ベッドに腰掛けたまま、暫く風鈴の音に耳を傾けたアキラがやたら張り付く喉に自分が喉が渇いていることに気が付いた。
ベッドをおり、裸足でワンルームの床をペタペタと歩き冷蔵庫の前に行き、扉を開く。
冷蔵庫よりこぼれるひんやりとした冷気が心地よく、もっと涼んでいたいがミネラルウォーターのペットボトルを取り出しアキラは一気に流し込む。
チリリリン、
チリリリン、
アキラがペットボトルの中身を半分ほど飲んだ時、先ほどより激しく鳴る風鈴。
丁度いい。風が出だしたのかと思い、更に水を飲む。
ふと、ザァザァと雨が降る音に気付き振り向いたアキラは窓にはしっかり鍵がかかっているのが見えた。
チリンッ
チリンッ
風がないのに揺れる風鈴にさっきまでの暑さが吹き飛ぶ……嫌な汗が頬を伝う。
チリリリンッ
チリリリンッ
徐々に激しく鳴る風鈴に吐き気を覚え、トイレに駆け込み便座に覆い被さるアキラの背を誰かがさする、、、、、。
アキラは一人暮らし、部屋には当然アキラ一人のみ。
時刻は午前3時。来客などいない。来るはずもない。
だが、嘔吐していてもハッキリと背をさする身が凍るほどひんやりとした誰かの手の感触がわかる……。
振り向きたいが、身体が強張り振り返ることが出来ない。せめて視線だけでも、と強がってみるがほんの少し目線を動かすので精一杯だ。
ドッドッドと脈打つ鼓動がうるさくて痛い。
……
…………
振り向く勇気が出なかったアキラが次に目を覚ましたのはとうに日が射しておりしかもベッドの上。
アキラにトイレから出た記憶はない。
……昨夜のアレは夢だったのか?
着ていた汗ばんだTシャツを脱いでいるとアキラの視界にあるものが見えた。
それはトイレの前に昨夜アキラが無造作に放り捨てたミネラルウォーターのペットボトルが寂しげに転がっている。
次にアキラの視界に入ったのは先ほど脱いだばかりの白いTシャツ。
いや、白だったはずのTシャツにはびっしりと背をさすった跡のように赤い手形がついている。
恐怖のあまり呼吸するのが必死なアキラには悲鳴はおろか声すら出せない。
部屋にアキラの荒い呼吸と鼓動が響くなか、、、
チリンッ
チリンッ
と、何かを言いたげに風鈴が乾いた音を鳴らす……。
チリンッ
チリンッ……。
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