プロローグ

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プロローグ

 この世界に住む若者の大半は冒険者になる。  理由は色々ある、金、地位、名誉・・・・・・。  だが冒険者は命がけの仕事だ。  その為、なる為には『冒険者学院』に通わなければならない。  その入学試験さえもハードルが高く合格率は一桁。  ・・・・・・更に言えば入学試験を受ける為には高い試験料を払わなければならなくてそこで躓く者もいる。  高い試験料を払って受けたとしても不合格になってしまえば全てが水の泡。  まぁ、学院に通わなくても冒険者には実はなれるのだがギルドの待遇が違うから学院に通っていた方が良い。  そんな夢見る受験生の一人が僕『ライト・バンティス』15歳、剣士希望なのだが・・・・・・。  たった今、その夢は破れました。  合格発表の日、張り出された合格者の一覧には僕の名前は無かった。 「ライト、どうだった!?」 「俺達、名前があったぞ! やっぱり全員合格だよなっ!」  一緒に受けた同じ村から出てきた幼馴染み達に声をかけられた。 「・・・・・・無かった。」 『えぇっ!?』  当然、驚きの声をあげる幼馴染み達。 「おかしいだろっ!? 俺達実技試験で優秀な成績を取ったのにっ!!」 「筆記試験でも結構良い点数を取ったはずなのにっ!!」  そう、筆記試験では3人で答え合わせをして合格ラインは越えていたはず、実技でも3人でパーティーを組み指定された魔獣を見事な連携プレーで倒した。  それなのに僕だけ不合格・・・・・・。 「合格者は入学手続きを行います。校舎の中にお入り下さい。」 「ど、どうしよう・・・・・・。」 「試験官に抗議に行くべきだっ!! ライトがいたから魔獣を倒せたのに不合格なんて絶対おかしいっ!!」  幼馴染み達は僕の為に抗議をしよう、としてくれている。  その気持ちはありがたいけど、抗議して合格したとしても、入学後の学院生活では多分浮いた存在になってしまう。  面倒な人間関係はゴメンだし、僕のせいで折角の合格を取り消しにさせては申し訳無い。 「僕は来年また受けるから二人は入学手続きに行って来なよ。」 「でも・・・・・・。」 「ほらほら、さっさと行きなよ。大丈夫だから。」 「・・・・・・わかった。でも、必ず来年受けろよ。待ってるからなっ!!」  幼馴染み達二人は入学手続きの為に校舎に向かった。 「・・・・・・ごめん、僕は諦める事にしたよ。」  背中越しに僕は二人に頭を下げた。  ハッキリ言うと僕の心はポッキリと折れてしまった。  これはもう運命だと思って受け入れるしかない、と思った。  僕は故郷に戻って畑を耕して暮らす事を決意していた。  校門を出て振り返り校舎を見る。 「つかの間の夢だったなぁ・・・・・・。」  宿屋に戻って僕は荷物を纏めて宿を出た。  此処は入学試験者は安く泊まれるけど、終わってしまえばさっさと出ていかなければならない。  お世話になった宿屋の人に挨拶した。  宿屋の人は『また来年来てね。』と行ってくれたがもう来ない。  こうして僕は故郷に帰った。  ・・・・・・そんな僕の様子を影で見ている人物がいるのを知らずに。   
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