第二章

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冷静になった後、後悔する。 メシアなどいない。無神論者が神などいないと言うのと同じ理屈だ。だが、それなら何故、白鳥透は私に希望を持たせるようなことを言ったのだろう。 きっと私に夢を見させて絶望へ蹴落とすためだ。 都合のいい話には裏がある。 私は今年で16歳になる。 16歳になったら、ポルノ法違反に引っかからないのだ。<バルブロ>のポルノは需要がある。 逃げ出すか殺すか。逃げ出しても連れ戻され、余計酷い目にあるのが目に見えていた。だからと言って人命を奪えば、<バルブロ>は死刑決定だ。 白鳥という男--。 もう何でもいい。早く助けて!! 懸命に願う。虎井を殺すためのアイスピックを手に藁の中で蹲る。 日に日に太陽は地球に近付いて来ている。 暑い。 藁が汗でベトベトになっていた。植物が腐った臭いが充満する。 2階で寝ている主を避けるようにして、水を求めた。 水を口に含んだ瞬間、今日食べた腐ったパンを生ゴミを入れてあった袋の中に吐き出した。 胃がムカムカする。 何かの病気にかかっていてもおかしくなかった。これだけ不清潔だと、今まで生きてきたのが凄い。 3階に上がり、アイスピックを藁枕の下に忍ばせる。小説『氷の微笑』のヒロインが男共にしたように華麗にアイスピックを虎井のコメカミに突き刺すのだ。 シュミレーション。完璧だ。 ただ逃げ切れるだろうか。 私の頭の中で殺人を犯した後、どういう経路で逃げるか計算される。ただ、地形に弱いため、八方塞がりのパターンばかり算出された。 白鳥に地図をお願いしよう。 彼は欲しい物何でも持って来てくれると言った。同い年の娘さんがいろうがいなかろうが、関係ない。 私はいつもの不敵な笑みの練習をし、しばらくアイスピックの感触を確かめると、藁の中で眠った。 目覚めた時、泣いていた。
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