プロローグ

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プロローグ

 絶対に好きになってはいけない。  そう思えば思うほど、彼のことしか考えられなくなっていく。  ふたばにとって彼は、たった一人の大事な家族が愛した人だから。 「あなたに抱かれるわけにはいかないのっ!」  彼に抱きしめられて、ふたばの心は歓喜に湧いていた。  好きになって欲しい。  もっともっと、あたしの身体を欲しがって──そう訴えていた。  身体だけは初めて触れあった時から正直だったということだろう。彼としたキスは、驚くほどに心地よさを生みだした。  触れられるたびに、身体は彼のことが好きで堪らないと訴えていたのに。  認めるわけにはいかなかった。  彼に近づいたのは、目的があるからだ。  本気で恋愛をするつもりなんかなかった。 「わかってる」  彼は切なげに目を細めて、ふたばを見つめて言った。  何もかもをわかったような顔をして、それでもふたばを見つめる瞳の中には恋慕の情が溢れている。  頭の中が真っ白になる。  どうして──?  知っていて、何でふたばに触れようとするのか。 「それでも俺は……君のことが好きだ。愛おしくて堪らない」  あたしも──と言えたらどんなにいいだろう。  何も考えず、この腕の中に飛び込めたらきっと幸せだ。  けれど、そんなことをすれば、ふたばが守りたい唯一の家族を傷つけることになってしまう。
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