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当時の家では犬を飼っていたのだが、いつの間にか猫が棲み着いて飼うことになった。その猫は何度か子供を産むことはあったけど、それが大きく育つことはなかった。
昔は今と違って猫の去勢や避妊手術をすることは一般的ではなく、飼い方にしても完全室内飼いは少数派で、たいていは放し飼いだったため、猫は自由に家の外にでかけ、自由に繁殖してきた。
おわかりのことと思うが、その猫の子たちがなぜ育たなかったか。祖母がバケツを使っていたからである。
猫は年に数回、複数の子を産む。そんなにたくさん産まれても育てられないと判断したのか、他に理由があったのかどうかはわからない。今であれば避妊手術すればそんな残酷なことをしないですむ話であるが、時代のせいか、祖母がひとりで手を汚していた。
バケツで処理をしたあと、熱心な仏教の信者であった祖母は、それを庭の片隅に埋め、お経を挙げて弔っていた。信心深いのに殺生をすることに僕は大きく矛盾を感じていたが、人間とはそういうものなのだろう。
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