① 新人はホイホイ?

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「それにしても、あの子は本当に魔物ホイホイだな」 「あぁ……事前情報の通りだ」 「魔王は分かってこちらに送り込んでるのか?」 「魔王だって、送った魔物の出現座標を細かく設定してるわけじゃないだろう」 「それならそれで、ずっと結界の中にいる仕事を選んでくれればなぁ」 あの子とはもちろん、ミソラ=カリアスのことだ。 世界最高峰の教育機関「レットラン魔法魔術学園」を卒業しながら、進学も研究過程も歩まず一企業に就職を希望してきた変わり者。 旅行会社は確かに学生に人気の就職先だが、彼女の希望した『添乗員』は別だ。 命の危険を伴う職であるゆえ、よっぽどの変わり者か物好きか、あるいは好奇心をもてあました放蕩者――彼らの職場であるミライ旅行社ではこのタイプが一番多い――しか希望しない。 そういう意味では、彼女は確かにミライ旅行社の添乗員に多いタイプの人間に見えないこともない。 しかし。 「魔力ナシなのに添乗課に配属されたって、そろそろ噂になり始めてるぞ」 緑色の前髪をさらりと揺らすロキを見て、真っ黒で艶やかな彼女の髪を思い出す。 黒と茶色は魔力がない証。 冒険者帯同ツアーでは、安全を十分に確保して催行しているとはいえ、状況によっては魔物からツアー客を守らなければならない場合もある。 そのため、添乗員には一定レベルの防衛能力を求める傾向が業界全体にある。 ミライ旅行社の添乗課員も、ミソラ以外の全員が基礎魔法を扱えるのだ。 緑のロキは風属性。 紫のリョウは植物属性。 青のヨリは水属性。 他に、金の雷属性・赤の火属性・黄土色の土属性の6種の魔法が一般的な魔法種で、魔法を扱えるレベルで魔力を持つ人間はそれぞれの魔種に応じた髪色を持っている。 「ま、お前が教育係ってだけでも十分に噂の的だったけどな」 シロイの持つ銀色。 これは、6種全てを扱うことのできる特別な色である。 「社長の息子だからか?」 「いや、銀色だからだろ。お前、自分の知名度の理由、ちゃんと理解した方がいいぞ」 「銀色を持ってたって、魔法を正しく発動させる知識がなきゃ、ただの色だ」
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