それは花火とともに

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「っと。天音。」 「え、なに…きゃっ!」 大柄の男とぶつかりそうになった天音の肩を抱いて抱き寄せた。 男はこちらをギロリと睨んで「…ちっ。」と小さく舌打ちをしては去っていく。 当たり屋か……いやちがうな。 たぶん天音を狙ったのかもしれない。 ちょっとぶつかって、心配するフリをして近付こうとしたか。 それか当たっただけでどこだか骨が折れただのケチをつけようとしたか。 どちらにせよ、適当に理由つけては近付こうとしたのだろう。 やらせるかよバカが。 天音は私だけの女で、最愛の恋人なんだよ。そこら辺のやつに近付けてたまるか。 「ちちちち千景ちゃんっ!?」 「ん?」 「えっとね?あの……ち、近い…よ?」 あぁ、なるほど。 だからそんなに顔が真っ赤に…可愛いなぁ!おい! 「嫌?」 ニヤリと思わず口角が上がる。 「い、嫌じゃ…ないよ?むしろ…。」 「むしろ?」 「う、嬉しくて…って言わせないでよバカァ。」 真っ赤になって放つ『バカァ』ほど破壊力ある言葉ってあんのかな。 可愛い。 いやもうこれはあかんやつ。 このまま抱き締めたいっ!キスしてもっと真っ赤にさせたいっ! いや、まて。 落ち着け。 ここは外だ。 それも人混みだ。 そんなところでキスしたら、天音が嫌がるかもしれない。 それ以前に私以外のやつに天音の可愛い顔とか見せるなんて絶対嫌だ。 だからここは落ち着くんだ。 冷静に冷静に。 「天音が可愛くてつい。」 「別に可愛くなんか…。でもさっきはありがとう。」 「別にいい。ほら、この人混みだから。」 おっけ。 冷静に言えた。 「ほら。はぐれないようにさ。」 さらに天音の手をとって、指を絡ませる。 恋人つなぎってやつね。 「うんっ!」 しかしここで予想外なことが起きる。 なんと天音さんは手をつなぐだけでは物足りなかったのか…。 思い切り私の腕にひっついてきたのだ。 何を言いたいかと言うと…。 身体が密着状態なのである。
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