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真剣白羽の勝負だった。
額に浮かんだ玉の汗が顎先まで流れて、ぽたぽたと滴り落ちる。
料理経験値が極めて低い茉莉にとって、焼き加減を見極めるのは、至難の技であった。
早過ぎてもいけない。
遅過ぎてもいけない。
表面の焦げ目を確認するには、ひっくり返せば良いのだが…『肉は極力動かさない方が良い』という、少年の忠告を守って、とにかく感覚でタイミングを計る。
孤独な悪戦苦闘は続いた。
一日目は、五枚のロース肉を試したが、どれも納得のゆく出来ではなかった。
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