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翌日。
すずかぜ食堂は、臨時休業と称して閉店しているが、厨房は、朝から活気づいていた。
茉莉が、調理場に立っている。
材料を買い直し、何度も何度も同じ工程を繰り返す。
努力の甲斐あってか、昨日よりはマシになっていたが、父・丈太郎のポークソテーを再現する事は難しかった。
(丈太郎…只者じゃない…)
父の偉大さに気付き始めた茉莉。
フレンチの名店で長年修行した後、茉莉の祖父にあたる初代すずかぜ食堂店主・清太郎の後を継いだという父は、本当に只者ではなかった。
丈太郎は、二代目店主として、すずかぜ食堂に洋食屋のメニューを取り入れたパイオニアなのである。
様々な客層の胃袋を掴み、『汚いけど美味い定食屋』という、輝かしい称号を手に入れた、きたなトランの『革命家』だったのだ。
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