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肉を皿に盛り付け、ソースを掛けて…茉莉のミッションは、コンプリートした。
「出来た…」
「おう、出来たな。」
「…どうかな、お父さん??」
「食ってみろ、食えば判る。」
丈太郎に促されるまま──茉莉は、ナイフとフォークを取る。定食屋のすずかぜ食堂で、ナイフとフォークを使うメニューは、ポークソテーだけだ。
こんがりと焼き目の着いた豚ロースに、ナイフを当てる。軽く力を入れて引くと、驚く程にスンナリと切れた。
一口大に切り取り、ゆっくりと口に含めば、甘い肉汁と仄かなガーリックの薫りが、茉莉の五感を刺激する。
「う…」
すずかぜ嬢は、一言呻いて絶句してしまった。そのまま固まってしまった娘を見て、丈太郎も恐る恐るポークソテーを食べてみる。すると──
「う…」
やはり、そう呻いて言葉を失った。
父娘は、大きく見開いた目を互いに見合わせて、叫ぶ。
「旨いっ!!!」
修業最終日にして、茉莉のポークソテーは、ついに最終形態に進化したのであった。
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