父の背中

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「やったぁ!ありがとうございますっありがとうございます!!」 思わぬ高得点であった。 嬉しさに込み上げる涙。努力が結実する喜びに、茉莉は、歓喜の声を挙げる。 思えば、生まれて此方、他人様に褒められた事が無い半生だった。少年から与えられた点数は、茉莉が学生時代に取ったテストの最高点を遥かに上回っている。 満足気なすずかぜ嬢に、穏やかなアルカイックスマイルを向けると──少年は、財布から紙幣を取り出して言った。 「お支払いします。お納め下さい。」 「そんな!私が勝手に付き合わせたので、お代は要りません!!」 すると少年は、静かに首を横に振った。 茉莉の手に、強引に紙幣を握らせて語る。 「受け取って下さい。すずかぜ嬢は、この対価に相応しい料理を、僕に振舞って下さったのだから。」 「よ、よろしいんですか??」 少年は、神の様に頷いて厳かに店を出て行った。眩しく眼を(すが)める茉莉には、彼の背に、真っ白な天使の翼が生えている幻覚(まぼろし)が見えていた。
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