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その男、肉食
下町の空。
四角く切り取られた青い背景に、ちぎった綿菓子の様な雲が浮かんでいる。
大衆食堂『すずかぜ』は、その店名にそぐわない熱気の中、昼の繁忙期に没していた。
「はい、焼肉定食あがったよ!」
「はーい!焼肉いっちょう!!」
ほぼ、ルーティンと化している遣り取りが、狭い店内に飛び交っていた。
父・丈太郎が、腕によりを掛けて作った料理を、自称『看板娘』の茉莉が受け取り、テーブル席に運ぶ。
母・夏絵が、空いたテーブルを片付け、そこへまた、馴染みの常連客が座る。
それが、すずかぜ食堂の日常だった。
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