不撓不屈

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不撓不屈

その日から、茉莉は、ポークソテーの練習に没頭した。誰も居ない真夜中の厨房で、ひとり、豚ロース肉と格闘する。 材料費は勿論、自腹だ。 小遣い程度の給料を全て投げ打ち、馴染みの肉屋から仕入れて来た一品である。 綺麗に手を洗い、まな板の前に立つと、少年の指摘を思い出しながら、先ずは丁寧に筋切りをする。 それから、肉に塩振り、表面が僅かに潤むのを待った。 フライパンを火に掛けて油を轢き、よく熱が回ったところで、肉を投入。 『ジュ!』と音がする温度で、肉を押し付ける様にして焦げ目を入れ…時々フライパンを揺すりつつ、滲み出た油を回し掛ける。
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