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「ちょっとトイレに行って来る」
小夜は立ち上がると、翔子に告げた。
「んだかぁ?場所さ、分かる?」
小夜は作り笑顔で頷くと、宴の席を離れた。
彼女はそのまま公民館を出ると、隣にあるポプラへと歩いて行った。
"さっきまで何故か息苦しくて、居心地が悪かった。きっと雲海さんが言っていた、神隠しの話しが頭にあったからだろう"
"行方不明・・・、誘拐!?私はこの村に居て大丈夫なのだろうか?"
小夜は自分の身の安全が、心配でならなかった。
小夜はポプラへ入ると、雑誌コーナーに行ってしばらく気を紛らわす事にした。
女性週刊誌を手に取りページを開く。
そこへ丁度、隣で立ち読みしていた男性が、小夜に近づいて来た。
小夜は意識しながらも、雑誌に集中する様に努めた。
「もしかして、桶川 小夜じゃないか?」
小夜は突然声をかけられ肩をすくめると、ゆっくり男性の方へ視線を移した。
「んんっ!?健太郎?」
「そう!やっぱり桶川か!懐かしいなあ、小学校の時以来か」
「久しぶりー!!、最初誰か分からなかったよ。健太郎、変わったね」
健太郎は親戚の幼馴染みで、埼玉の出身だった。お盆の時期によく遊んだ間柄である。
「桶川の方が変わったよ!大人っぽくなって。こんな田舎に女優みたいな美人いたっけって、最初思わずガン見した」
「またまた健太郎も上手だなぁ。今、何してるの?」
「東大生だよ、民俗学を選考している」
さり気ない健太郎の一言に、私は耳を疑った。
「東大生!!?あの東京大学!!?」
「他にどこあるんだよ」
健太郎は小笑すると、小夜に尋ねた。
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