200人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「そ、それより春樹こそ、どうしたの? その格好」
恥ずかしさを誤魔化すように、逆に春樹へと聞いてみる。
だって今の春樹、襟と折り返した袖にだけ柄の入った白いシャツに、茶系のズボンをゴールドのサスペンダーでとめている派手な服着てるんだもん。
その足下は同じくゴールドの靴と僅かに見える靴下は右が緑と黒、左がピンクと黒のストライプでなんとも春樹らしい着こなしだった。
「これ? 体育館のダンスに参加するために家庭科部に作ってもらったの♪」
そう言って得意気にクルッと回った春樹は、いつものバンド系ファッションとはまた違って……なんか可愛い。
「ほら、体育館って俺と涼のクラスの企画でしょ? 龍達に任せたら、なんかえらいことになっちゃって……最終的になんでもありの仮装ダンスパーティーになっちゃったんだよね」
呆れたようにそう言った春樹だけど、衣装まで用意してるあたり本人も楽しみにしていたんだろう。
「確か山ちゃんもダンス披露してるはずだから、雪ちゃんも行く?」
「いや、俺、こんな格好だから遠慮しとくよ」
少し覗いてみたい気はしたが、このまま行くわけにはいかないと思って断ったのに、春樹は不思議そうに聞き返してきた。
「なんで? そのままでいいじゃん」
「バカ! 俺だってバレたら恥ずかしいだろ」
あまりに直球過ぎる考えに、俺は速攻で言い返した。
「だったら雪ちゃんだってバレなきゃいいんでしょ?」
「……どうやって?」
春樹があまりにも自信満々に言うので、俺は訝しげながらも聞いてみる。
すると、春樹はいつもと違って何かを企んでいるような嫌な笑いをみせた。
「そうだな~……雪ちゃんの方から俺にキスしてくれたら教えてあげる♪」
「ええっ?」
「ほら、どうするの? 雪ちゃん」
そのまま、いたずらっ子のような笑みで春樹は俺を見つめてくる。
いや、正直、そこまでして仮装パーティー行かなくてもいいんだけどな、俺。
そうは思っても、何だか春樹が得意気な様子だし……周りには誰もいなくて二人っきりだし……。
最初のコメントを投稿しよう!