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学園祭ラストの近づきを教える花火を眺めていると、ポツリと名前を呼ばれる。
「雪くん」
「ん?」
振り返ると、陽愛くんが真剣な表情で見つめていたので俺も少し緊張してその顔を見つめかえした。
「あの五人で暮らしてる家のことなんだけど……」
「うん」
「もし、雪くんさえ良ければ、このまま……」
そう言って陽愛くんに両肩を掴まれたと同時に、騒がしい声とともに美術室の扉が開いた。
「お待たせ~!」
「大丈夫でした? 雪ちゃん」
「雪乃くんの着替え、持ってきたよ」
声で春樹、オキ、涼介の三人だとわかり、俺がホッとして声の方を向こうとすると、いきなり肩を掴んでいた陽愛くんに引き寄せられた。
「ああ~!」
あまりに突然で状況を理解出来ずにいた俺だったが、ドア付近から見事に揃って響いた三人の声と、自分の口の中へと滑り込んできた柔らかい感覚に陽愛くんにキスされているのだと気づく。
しかも、こんな濃厚なディープキスなんていつもあの時にしかしないのに!
「んぁっ……んぅ……」
他の三人が見ている前での行為に、恥ずかしくて抵抗しようとするがそれすらも許さないように陽愛くんに舌を絡め取られ、俺の口からは甘い声しか出てこない。
しまいには完全に陽愛くんに身体を預けてしまった。
「俺の雪ちゃんになにしてんの! 山ちゃん」
そんな言葉とともに春樹が走ってきて、俺と陽愛くんを引き離した……と同時に、俺はオキに引き寄せられた。
「そうですよ! まあ、お前のじゃないけどな」
「オキのでもないだろ。雪乃くん、大丈夫?」
さらには涼介に、酸素不足で苦しそうになっていた顔を心配そうに覗き込まれる。
「大事なところで、タイミング悪くみんなが来るからだろ」
みんなから責められ、陽愛くんが不機嫌そうに言う。
「だからって膝の上にお姫さま抱っこはないでしょ! 雪ちゃんは俺とベストパートナーに選ばれたんだからね」
「どうせ、龍臣や南朋あたりの同情票だろ?」
「同情ってなんだよ!」
自慢気に言った春樹にオキが呆れたように突っ込むと、それに対して春樹が言い返すものだから収集がつかない。
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