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感謝心が半減した私は
恩人の観察のために一歩後方に下がった
てか・・・まだ揺れてるし
若干イラつきながら
頭の先からゆるりと視線を滑らせば
後方に流した黒髪は清潔感が溢れている
キッチリ結ばれたネクタイ
少しもヨレていない濃紺のスーツ
ピカピカに磨かれた革靴は
魔女か?いや男性だから魔王?
魔王って・・・違うか
あっ!
“魔法使い”の靴!
それだ!
革靴は魔法使いのように先が尖っている
うんうん
顔は・・・
半分しか見えない顔を見ようと
視線を上げると
「・・・っ!」
いつのまにか覆っていた手を外し
こちらを見ていた男性と目が合った
・・・ど、どうしよう
助けてもらう→お礼を言う→笑われる
→イラつく→観察する→真顔
・・・怖っ
「川喜田琴さんですね」
お?
「・・・は、い?」
「何故疑問系?」
「初対面の男性が自分の名前を言うホラー?」
「な、ブッ、ハハハ」
また吹き出して笑い始めた
えっと、とりあえず
殴って良いですか?
それより
怖いので移動しよう
未だ笑い続ける失礼さんを放置し
時計台の反対側へフェイドアウトしようとした瞬間
「わっ」
失礼さんの手が私の腕を掴んだ
「な、なに?なんですかっ?」
駅前はなんて怖い場所だろう
2回もタイプの違うのに絡まれ
幼気な中学生の精神はボロボロだ
離してと腕を振る私の耳に飛び込んで来たのは
「お迎えに参りました」
最初に聞いたより
もっと低くて威圧感のある声だった
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