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「・・・・・・せん」
「ん?」
「わ、私は護って欲しいなんて頼んでませんっ!・・・それに!
再婚するのは母であって、私は関係ありませんっ」
胸の中に渦巻く黒いモヤを
一気に吐き出すと
襖を乱暴に開いて飛び出した
ムカつく・・・
ムカつく・・・
「ムカつく」
長い廊下を来た時と逆に走っているはずなのに
どこまで走っても玄関にたどり着けず
怒りに任せて飛び出した原動力である
“ムカつく”想いがどんどん削がれて
少しの不安が徐々に膨らんできた
でも・・・
微かに聞こえる
「琴ちゃーん」
「お嬢さーん」
私を探している声に
焦りが加わって
廊下→無理
部屋→窓→外→逃げる
閃きに縋るように
目の前にある襖を開いた
ソーっと忍び込むとちゃんと閉める
奥に見える障子を開けると
「よっしゃ」
現れた大きな窓から
緑地公園か?と見紛うばかりの
お庭が見えた
窓の鍵を外して
靴下のまま庭に飛び降りると
隅に見える塀に向かって走り出した
・・・・・・
・・・
・
「客室から庭に出たようです」
「そうか」
「琴ちゃん、初めての反抗かも♪」
「ガキが!」
「俺が迎えに行く」
必死で逃げる私は
動きが手に取るように知られていることも
簡単に捕えられることも
猛獣が庭に放たれていることも
何も・・・知らなかった
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