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母の再婚話を聞いた日
結局終日空き教室で過ごした優羽と私は
SHRだけ顔を出しただけで
学校を後にした
「18時に駅前だっけ?」
「うん」
「いい?最初が肝心だからね?
脳内お喋りは封印して、ちゃんと声にするんだよ?」
何度も何度も繰り返す優羽
「・・・うん」
「あと・・・笑顔もね?」
「・・・うん」
就職面接に行く前の確認事項かよってくらい
優羽は繰り返し繰り返し話してくれた
「第一印象って重要だからね」
マンション前に着いても
繋いだ手が離せない私を
「今日だけだからね」
とびきり可愛く笑った優羽は
繋いだ手を解くと
両手を広げてそのまま抱きついてきた
「・・・っ」
「大丈夫、琴なら大丈夫」
身長もほぼ同じ優羽の声が
耳から優しく入ってきて
一日中力の入っていた肩が
スーッと楽になった
パッと離れた優羽の顔は赤くなっていて
「キャー!恥ずかしい」
両手を頬を挟んで悶える優羽は
やっぱり食べちゃいたいくらい可愛い
「優羽、ありがとう」
「あ、うん」
揺れるのを止めてキョトンと見つめる優羽
「誘拐されるよ?」
「・・・は?」
「じゃあ明日ね」
「・・・あ、うん」
可愛い→誘拐
その構図を理解してくれたのか
少し呆れ顔の優羽に手を振ると
エレベーターに乗った
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