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「山崎すごいな」
3ヶ月くらい経って、ぼそりと支店長、坂根がつぶやく。
「何がすごいんですか」
「聞いたか? 初出展の北海道に出張だとよ。しかも上層部が満場一致で推薦」
……なにそれ。そこは私じゃないの!?
驚いた。驚きすぎて、初めて彼女が脅威に感じる。今までそんなこと微塵も感じさせなかったのに。
人事部長が言ってた仕事のことって、まさかこれのこと?
喉が急激に渇いていく。
「2年目なんか普通連れていかねぇからな……。いや、ほんと、1年でよく育ったよ。そこは、エリア長が教えてただけあるな」
関心する坂根は、私のことなど何も考えていない。
私も2年目なんだけど。むしろ、キャリアは私の方が上なんだけど。
そもそも、1年経てばそりゃ成長するでしょ。成長しない奴がいたらビックリだわ。なんで、長くいる私の方が評価されないわけ?
イライラしながらも、メール画面を立ち上げる。
『こんにちは! ずっと飲みに行きたいと思ってたんだけど、飲みに行かない?』
気づいたら、山やんに送っていた。しばらくして、山やんからOKをもらえたので、日曜日の仕事のあと飲みに行くことにした。
「やー! ずっと飲みたかったから、嬉しいー!」
いつものテンションで山やんにいうと、彼女は声を出して笑った。パワフルな笑い方。でも愛嬌を兼ね揃えている笑顔は、確かに信用して契約してしまいそうだ。
「私も、ずっと余裕なかったから……」
「そんなことないでしょー」
そう言いながら、相手を探る。本当は余裕ぶっこいて、天狗になっているんじゃないの。こんなに注目されているんだから、そうに違いない。
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