13人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「花パンは?」
首を傾げて返してくる辺り、彼女は私の恋愛など興味がないようだった。何も知らないようだ。
「私は、ほら、営業部長の金城さん」
「え、あの人と付き合ってんの!? すごっ」
山やんの純粋な驚きに少し心が満たされる。
そうそう、そうやって私を上に見て。
すごいでしょ?
「そういう山やんは?」
「私は、高校の同級生だよ」
ん?
「高校の同級生? じゃあ、長いの?」
「えっと、大学入学してすぐだから……、もう4、5年目かな」
「すごーい!! 少女漫画じゃん!!」
私がすごいと思ってしまった。
大半の人が憧れているのに手にできないシチュエーションを、彼女は掴んでいる……。素直にすごいし、羨ましくなった。
実は男の人と長続きしたことがない。そんな長く続くなんて、一体どんな手を使っているのだろうか。
というか、飽きないの?
「少女漫画って……。まあ、長いだけだよ」
「結婚は考えてるの?」
「うーん。考えてなくはないけど、仕事のことをどうするかも考えなきゃいけないしね……」
「そうだよね」
「花パンは?」
「あ、私も同じ……」
実際、結婚を考えるほど、長い付き合いをしてことがない。見栄を張ってしまった。だって、向こうは仕事の壁さえ越えられれば、結婚できる状態ということでしょ?
でも、たしかにこの仕事は同業者じゃないと結婚は難しい。というのも、土日はたくさんの客が絵を見に来るから、休めないのだ。営業で夜遅くになったりもするし、仕事をやめたくないとなれば、結婚は難しいと言えた。
最初のコメントを投稿しよう!