マウント女の戯言

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「花パンは?」 首を傾げて返してくる辺り、彼女は私の恋愛など興味がないようだった。何も知らないようだ。 「私は、ほら、営業部長の金城さん」 「え、あの人と付き合ってんの!? すごっ」 山やんの純粋な驚きに少し心が満たされる。 そうそう、そうやって私を上に見て。 すごいでしょ? 「そういう山やんは?」 「私は、高校の同級生だよ」 ん? 「高校の同級生? じゃあ、長いの?」 「えっと、大学入学してすぐだから……、もう4、5年目かな」 「すごーい!! 少女漫画じゃん!!」 私がすごいと思ってしまった。 大半の人が憧れているのに手にできないシチュエーションを、彼女は掴んでいる……。素直にすごいし、羨ましくなった。 実は男の人と長続きしたことがない。そんな長く続くなんて、一体どんな手を使っているのだろうか。 というか、飽きないの? 「少女漫画って……。まあ、長いだけだよ」 「結婚は考えてるの?」 「うーん。考えてなくはないけど、仕事のことをどうするかも考えなきゃいけないしね……」 「そうだよね」 「花パンは?」 「あ、私も同じ……」 実際、結婚を考えるほど、長い付き合いをしてことがない。見栄を張ってしまった。だって、向こうは仕事の壁さえ越えられれば、結婚できる状態ということでしょ? でも、たしかにこの仕事は同業者じゃないと結婚は難しい。というのも、土日はたくさんの客が絵を見に来るから、休めないのだ。営業で夜遅くになったりもするし、仕事をやめたくないとなれば、結婚は難しいと言えた。
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