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「でも、すごいね。大恋愛なんだね」
「いやいや、正直もう落ち着いてて、恋愛って感じじゃないよ」
苦笑する山やんは、少し照れていた。これは失敗したな……。まさか、仕事に熱中して一番成長している彼女が、彼氏がいるなんて思わなかった。
しかも、掴まえようと思えば、掴まえられる営業部長より、遥かに難易度の高い、高校の同級生ときた。学生時代の恋愛を続けられている人は、人脈の広い私が知っている限りでも一握りだ。
あと、勝てるものってなんだろう?
「あ、そういえば、他の人の営業って見たことある?」
「もちろん、あるけど……」
「たまに下手くそな人いない?」
「ん? そうなの?」
山やんは、絶賛伸び盛りだから会社の情報を知らない。
「そうそう。エリアの田中さんって営業のベテランさんなのに、いけそうな案件取り逃がしてるし、石見さんは海外の人がきたときは英語じゃない? その英語の発音がやばいのよ」
「ふーん。私、英語できないから、そこら辺よくわからない」
「いやいや、実際、大丈夫? っていうの多いよ 」
いい。そうそう。私には英語があった。英語ならこの子はできないし、上に立てる。
「まあでも、花パンが力あるんだろうね」
「いやいや、誰でもあの発音はやばいってなるから。でも、私は色んなところから来ないかって誘いは受けるよ? 英語できる人は重宝するみたい」
「へぇ。花パン、ほんと人脈あるんだね」
目を輝かしていう彼女に、私は、自分が誇らしくなった。
欲しかったものはこれだ。そうそう、すごいっていうその表情がほしいのよ。
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