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「私、すごい人しか尊敬しないから、去年は山やんも『アウトオブ眼中』だったんだよね。でも、本当に成長して、今や負けてられないなってなってる」
「アウトオブ眼中って……! 面白いこと言うね」
お腹を抱えながら、笑う山やん。
この子は私のことを満たしてくれる要員だ。上手くいけば取り込めそうだし、そこは、あまり頭が良くない感じで良かったかも。
「てか、このエリアやばいよ。早く抜けたい。神奈川いきたいなー」
「行けるといいね」
山やんって、本当にいい人だ。
「じゃあ、今度また飲みに行こ!」
「いいよ」
笑顔で返事をする山やんは、よく見ると可愛いかも。今度、飲み会のときは誘おうかな……。誘ったら、山やんと仲良い花パンってすごいってなる。
……うーん。それは求めてない。やめた。
私たちは、別れ、また翌日から仕事に打ち込むこととなった。
でも全然仕事では私に声がかからなくなった。逆に、山やんはどんどん営業成績をあげ、将来の支店長候補として名前が挙がるようになった。
何かイベントがあれば、彼女が出る。私も、たまに呼ばれたけど、回数は比じゃない。
一番がいいのに、どんどん一番を山やんに塗り替えられていった。
ある日、支店のなかを歩いていると偶然通りかかったトイレから女子たちの声が聞こえてきた。後輩たちだ。
「気づかないものなのね」
「ほんとほんとー」
女子たちがこそこそ話している。気になって、少し耳を済ませる。
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