定点観測

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「あっ!」  唐突に、シュンスケが叫んで、アツヒロは今度こそ跳び上がって驚いた。 「な、なになに!?」 「来た」 「え、何が?」  またどこかの部が外周を始めたか、ロードから帰ってきたかと思って当たりを見渡すが、それらしい影は見当たらない。あれ、と思ったアツヒロがシュンスケを振り返ると、彼はスマフォをポケットにしまって、シューズの紐を結び直している。  きっ、と紐を締めて立ち上がったシュンスケは、アツヒロに顔を向けた。走っている時と同じ、真剣な貌。 「じゃあ、これで… えーっと」  そこで「はて?」という表情を見せたので、アツヒロは思わず吹き出す。そうだ、彼は自分の名前をきっと知らない。 「長峰、ながみねあつひろ。E組」  写真部の、というのを付け足しそびれたが、まあいいだろう。 「そっか、長峰、写真ありがとな!」 「ああ… どういたしまして」  て、を。アツヒロが言い終わる前に、彼は大地を蹴っていた。  刮目すべき初速だった。  鮮やかに、この丘をたぶん三歩で駆け下りた。だがいつもの、あの整然と駆け抜ける超特急とは違って、躍動感溢れる走りだった。弾むようにグラウンドを駆けていく。  その先に、は、   えっ…?
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