39人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ!」
唐突に、シュンスケが叫んで、アツヒロは今度こそ跳び上がって驚いた。
「な、なになに!?」
「来た」
「え、何が?」
またどこかの部が外周を始めたか、ロードから帰ってきたかと思って当たりを見渡すが、それらしい影は見当たらない。あれ、と思ったアツヒロがシュンスケを振り返ると、彼はスマフォをポケットにしまって、シューズの紐を結び直している。
きっ、と紐を締めて立ち上がったシュンスケは、アツヒロに顔を向けた。走っている時と同じ、真剣な貌。
「じゃあ、これで… えーっと」
そこで「はて?」という表情を見せたので、アツヒロは思わず吹き出す。そうだ、彼は自分の名前をきっと知らない。
「長峰、ながみねあつひろ。E組」
写真部の、というのを付け足しそびれたが、まあいいだろう。
「そっか、長峰、写真ありがとな!」
「ああ… どういたしまして」
て、を。アツヒロが言い終わる前に、彼は大地を蹴っていた。
刮目すべき初速だった。
鮮やかに、この丘をたぶん三歩で駆け下りた。だがいつもの、あの整然と駆け抜ける超特急とは違って、躍動感溢れる走りだった。弾むようにグラウンドを駆けていく。
その先に、は、
えっ…?
最初のコメントを投稿しよう!