第四章

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「そう、ならいいけど」  明里先輩と別れて、透子さんとエレベーターに乗る。他に乗り合わせている人は誰も居ない。個室の中で透子さんと二人きりだ。少しだけ気まずい。 「先日は、お仕事中だったのに追いかけてきてくれてありがとうございます」  透子さんは深々と頭を下げる。やはり妄想ではなく現実だった。向こうから話題を振られると思ってなかったので不意打ちを付かれた気分だ。透子さんを抱き締めた後、俺は我に返って何も言わずに書店に駆け込んでしまった。まずはそれを謝らなければ……。 「見苦しい姿をお見せして申し訳ありませんでした」  謝ろうと思っていたら先に本人に謝られてしまった。 「いえ、俺の方こそ……失礼なことをしてしまったというか」 「失礼なこと?」  透子さんは頭上にはてなマークを浮かべている。あれ、やっぱり夢だったのか?  自分から言うのは抵抗があったけれど、透子さんは自ら答えを導き出せそうになかったので俺から切り出すことにした。 「えっと……俺、透子さんのこと抱き締めましたよね?」 「あ、なんだ。そのことですか」  なんだって。その程度の事なのか? 男に抱きしめられたのに? 俺は内心動揺する。 「あれは泣いている私を勇気づけるためにしてくれたんですよね。ちょっとびっくりしましたけどお陰様で五項目の『体の一部分に触れること』はクリアできました」
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